キミ想い
LAST STORY 【想いの結晶】
片桐と佐伯がよりを戻した。
そんな噂が校内に流れ始めたのは、夏休み前、私の腕のギブスが取れる前だったと思う。
二人して同じような怪我をして、似た者カップルだと友人たちにツッコまれ飽きたのもその頃。
それから夏が過ぎ、腕も完全回復して。
枯葉舞い散る秋を越え、受験に追われる厳しい冬を迎えた私たち。
胃が痛くなるような思いでどうにかセンター試験を終え、あとは卒業を迎えるだけとなっていた二月下旬。
前日から降り続いている雪の中、学校に登校した私は、卒業制作の為に学校で居残りをしていた。
「ほい、差し入れ」
同じく卒業待ちのハルが私に温かいお茶の缶を差し出してくれて。
「ありがと」
お礼を言って受け取ると、ハルは私の隣りの席に腰を下ろした。
今日はハルも私と一緒に卒業制作に取り掛かっている。
「そーいや佐伯は?」
「蓮もクラスメイトと卒業制作だって」
「ふーん」
関心があるのかないのかわからない相槌を打つハルは、中断していた作業に没頭し始めたようだ。