キミ想い


階段を下り、昇降口で靴に履き替える。

そうして、登校する時にさして来た傘を手にし、雪の積もる校庭に向かった。


吐き出す息は白く、ふわりと空気に溶けて消える。

辿りついた校庭を見れば足跡がついていて、目で追うとその先には蓮の姿があった。

彼は口元に笑みを浮かべ、私を待っている。

私は、蓮がつけた足跡を辿り歩き、彼を目指す。

時折強く吹く風が、傘を持ちバランスを取る私の歩みを遅くさせた。


不意に、少し前までの私みたいだなと感じる。


強い風に負けて、蓮を見失って。

その先に彼はいるのに……私は、進むことを諦めて立ち止まってしまった。

傷つけるのも、傷つくのも怖くて。

守りたいものの為に、これでいいのだと焦がれる気持ちに無理矢理ふたをした。

やがて、ハルという人が寄り添って。

別の道へと案内してくれて……


私は、蓮への道を完全に見失ったはずだったのに。


蓮が、また足跡を教えてくれたのだ。


ここにいると。


変わらずに待っていると。


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