キミ想い
風が止む。
そっと傘を持ち直せば、蓮は変わらずにこちらを見て笑んでいた。
そうして「大丈夫か?」と声をかけてくれる。
私は笑むことで返事をすると、また歩みを進め蓮へと近づいていった。
大丈夫。
もう、迷ったりしない。
蓮だけを真っ直ぐに見て、隣を歩くと決めたから。
ただ、あなたの隣だけを。
しっかりと雪を踏みしめて進み、私は蓮の元に辿りつくと彼を傘の中に入れる。
見上げれば、蓮の頭には少し雪が被っていた。
私は片手でそれを払おうと手を伸ばす。
その、刹那──
蓮の腕が私の背中にまわって。
彼は少し身を丸め、私に抱きついた。
「なずなはあったかいな」
「コートくらい着ればいいのに」
「教室が暑すぎたからな。一応マフラーはしてるし。ヒートテックだし」
「と言いながら、私で暖をとってるのはどちら様ですか」
「これは単なる愛情表現」
言って、私を抱きしめる力を強める。
私は傘をさしていない左腕で、蓮を抱きしめ返した。