キミ想い
私の隣りに立つと、中庭を見下ろして……
「答えなくてもいいが」
佐伯は視線を中庭のままに、声を発する。
「片思いの相手はもしかして、今、成田と話してる男か?」
否定するには図星過ぎて。
佐伯の勘に動揺し、何も答えれなかった事が……
「なるほどな」
答えになってしまった。
多分、私の右京に対する気持ちごと佐伯には伝わってしまっている。
それにきっと、佐伯なら右京が誰を想ってるかも知ってるんだろうな……
佐伯の視線が私を捉える。
そして、一言だけ音にした。
「苦しくなったら言えよ」
私の頭をくしゃっと撫でて、佐伯は振り返る事無く教室へと消えて行く。