キミ想い


「実は俺、今日は部活休みだから暇なんだ」

「そうなんだ」

「ああ。だから、ちょっと付き合ってくれないか?」


突然の誘いに私が数度瞬きをすると、佐伯は喉の奥で笑った。


「抱えるよりも発散だろ」


その言葉を最後に、佐伯は私の返事は聞かずにまた授業へと戻る。


発散、か……

ホント、そろそろ発散しないとおかしくなりそうだ。


「カラオケに行きたいな」


青空を見ながら呟けば、隣りで気配が動いた気がして、次いで「りょーかい」と佐伯の甘いような柔らかい声が聞こえた。


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