キミ想い


「片桐はなんで成田に話さない? 雪平との関係を先に言っておけば成田は相談すらしなかったはずだ」

「そんなの、右京を傷つけるだけでしょ」

「違うな。片桐は自分が傷つきたくないから黙ってたんじゃないか? 雪平の為って言いながら、いつか雪平に、お前が成田に話したのを知られたらお前がどう思われるか……怖かった、だろう」


そこまで考えた事はなかった。

思ってるつもりもなかった。

でも、どこか図星だと感じる私がいた。


恋する者の性といえば聞こえはいいけど、私は右京に関する事には逃げる癖がついてる気がする。

傷つけたくないから、傷つきたくないから……逃げてしまうんだ。


右京の前でかりんの名前を出さなかったのも、かりんに右京との事を告げなかったのも、結局は全部、私が傷つかない為のもの。


「弱いね、私……」


乾き始めた涙。

少し突っ張る頬を緩ませて空笑いすると、佐伯は私の頬にまだ残っていた涙を親指で拭ってくれた。


「それで普通だ」


弱くても強くなれるのが人。

そして、恋ってやつなんだとかっこ付けたように佐伯が言って笑みを浮かばせる。


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