キミ想い
「さすがです、佐伯せんせー」
無理してる笑い方だったかもしれない。
それでも佐伯に笑って見せると、彼は立ち上がった私に手を差し伸べた。
「そろそろチャイムが鳴──」
そこまで言いかけて、佐伯が止まる。
私は手を伸ばし掛けて、佐伯の異変に瞬きを繰り返した。
佐伯の視線は窓の外。
だけどそれはほんの一瞬で、すぐに何もなかったように私に視線を戻した。
「どうしたの?」
「いや? それより教室に戻るぞ」
言いながら、今度は待つ事なく私の手を引いて起こしてくれる。
でも、私は気になってしまってた。
佐伯の視線の先に何があったのか。
だから……見てしまったんだ。
そのまま佐伯に促されて教室に戻れば良かったのに。
そうすれば、見る事もなかったのに。