キミ想い


ポン、ポンと。

優しい体温が伝わって。

私はゆっくりと瞼を閉じた。

佐伯の手のひらから伝わる温もりが、思いやりが、私の沈んだ心を緩やかに癒してくれる。


佐伯はあの日……右京とかりんのキスシーンを目撃してしまった日から、私の傍にいてくれるようになった。

部活がない日はうちに来て、何をするわけでもなく一緒に過ごす。

私の調子に合わせ、時々外に連れ出してくれる佐伯の気遣いには感謝しきれないくらいだ。

どうしてここまで良くしてくれるのか。

何度か疑問に思ったけど、それと向き合えるほどの余裕がない私は、ただひらすら、佐伯の厚意に甘えさせてもらっている。


早く浮上しないといけない。

いつまでも佐伯に迷惑をかけるわけにはいかないんだから。


だけど……


「佐伯」

「ん」

「かりんが、彼氏と別れたって」

「……そうか」


返事した佐伯の手が、私の肩にまわって。

また、ポンポンとあやす様に優しく叩かれる。


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