キミ想い

「昔から風邪はあまりひかない方だから気にしなくていい」


降りしきる雨を眺めながら、佐伯はそう言って、私の隣にいることを選んだ。


ありがとう。


感謝の気持ちを口にすれば良かったのに。

言ってしまえば、泣いてしまうような気がして。


「なんとかは風邪ひかないってやつですか」


憎まれ口を叩いてしまう。

そんな私を、佐伯は何の言葉も返さないまま……


「…………」


無言で、ジッと見ていた。


「な、なに？」


大方、可愛くない女だ、とか思われたんだろうと予想しながら聞けば。


「……俺の前では強がる必要ないだろ」


佐伯の声が雨音をBGMにして聞こえて、私は小さく頷く。