キミ想い
「……片桐」
「なぁに」
「やっぱり寒いから、少しくっついていいか?」
「……うん」
雨音にかき消されるかのような小さな返事だった。
だけどちゃんと届いていたようで、隣りに座る佐伯は私と寄り添うようにくっついて、二人の間にあった隙間をなくす。
制服越しに伝わる体温が、温かい。
でも、まだ……寒い。
体が、心が、悲しみで冷えていく。
どうしたらこの痛みを消せるんだろう。
いつになれば、また前みたいに笑えるようになるんだろう。
苦しみを吐き出すようにゆっくりと息を押し出せば、まだ薄いけれど白い息が舞い上がって。
霧散する白色を眺めていると……
ふいに、手に感じる温もり。