キミ想い
「なずな!」
強い口調でかりん話しかけられて、私はハッと身体を震わせた。
「な、なに?」
「もぅ、話し掛けてるのに上の空なんだもん。体調でも悪いの?」
心配そうに覗きこんで来るかりんの瞳。
綺麗な綺麗な、瞳。
彼も、同じように思ってるんだろうか……
「大丈夫。それで、なんだっけ」
「だからね、電話が来たの」
「誰から?」
「もぅ! 青木君からだよっ」
青木君……青木 湊(アオキ ミナト)君は他校の生徒で、かりんが友達を通じて知り合った人。
かりんの話しによると、かなりの美少年らしい。
その青木君に、どうやらかりんは一目惚れしたらしく、だけどなかなか進展がなくて、かりんから話しを聞く事も少なくなってた。
だから今、かりんの口からその名前が出て、私は少し安堵した。
そんな自分を嫌な女だと思う。
右京の想いがかりんに届かない事にホッとするなんて。