キミ想い
手はいまだ繋がれたまま。
そっと、唇に重なっていた体温が、僅かに離れると、佐伯は囁いた。
「俺はズルいから、傷心の片桐に付け入ろうとしてる」
甘さを持った声で。
「お前は被害者だ」
自分が悪いと告げて。
「だから、余計なことは考えず、俺に腹でも立ててろ」
再び、唇を重ねた。
強引で、いたわるようなキス。
この状況に困惑してないわけじゃない。
これがいいことだとも思ってない。
だけど……
佐伯だから。
私は、瞼を閉じて、彼の唇を受け入れた。