キミ想い
今更すぎる、ひどい罪悪感が私を襲って眉を情けなく寄せていると。
なぜか佐伯は、おかしそうに身体震わせて笑っていた。
「ちょっと、何で笑うのよ」
「ああ、悪い。いや……彼女ならとっくに別れてる」
「……え、そうなの? いつ」
「いつだったかは忘れたが、もう三か月は経ってるか」
……って事は、私と仲良くなり始めた頃はすでにいなかったのか。
「なんだ、ちょっとホッとしたかも」
膨れ上がっていた罪悪感がしぼんでいき、私は安堵の息を吐く。
「そういう事だ。だから気にしないで俺に付け入れられてろ」
語尾に近づくにつれて甘さを含んだ佐伯の声。
同時に彼の顔が私に迫って、今日、何度目かの口付けが交わされる。
雨音を聞きながら、私達はチャイムが鳴るまで手を繋いで寄り添っていた。
まだ、失った恋の痛みはうずくけど
涙はもう、止まっていた。