キミ想い


「なに、言ってんだか」


笑顔で誤魔化したつもりだったけど、誤魔化しなんて蓮に通用するわけがなく。


「……さて、その理由を教えてもらおうか」

「──え?」

「お前、昨日から俺との距離をあけてる気がするんだが」


……ああ、やっぱり来た。


私は寒さで凍えそうになっている身体をさすりながら唇を動かした。


「ちょっと、色々思うところがあって」


蓮に誤魔化しはきかない。

なら、ギリギリのところで答えるしかない。


「……まあ、その思うところってのを無理には聞かないが……」


蓮の吐く息が白く舞い上がって。


「無理して俺と一緒にいる事もないだろ」

「え、あ……」


私が何か声をかけなきゃと思った瞬間、蓮は扉の方へと足を向けて歩き始めてしまう。


地面にへばりついたように足が動かない。


呼び止めることもできない私の背中越しに聞こえた蓮の声は……



「じゃあな」



冬空の下、私を一人ぼっちにしたのだった──‥










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