センチメンタル*宅配便
暫らくすると、階段を上る音が聞こえ、部屋の扉をノックする音が響いた。
返事もせずにいると、扉が少し開き、廊下からの明かりが暗い部屋に差し込んできた。
勉強机の上に皿が置かれる音がした。
「お腹が空いたら食べなさい。就職してから見る度に痩せていくから心配なのよ。食べれるのだったら、少しは食べなさい」
そう言うとお母さんは静かに部屋の扉を閉めた。
お母さんが私を心配して、おにぎりとお茶のペットボトルを置いていった。
あえてシバケンの話をしないお母さんの優しさは嬉しかったけれど、食欲は湧かなかった。
おにぎりに背を向けるようにして、寝返りを打った。
「はぁ!?2組の馬場が好きだって?何で俺にそんなこと言ってくるんだよ」
「だって、シバケン、サッカー部じゃん?サッカー部の中で馬場くんと一番仲がいいって前に言ってたじゃん」
確か中学2年生の時だった。
私は学校で一番カッコよくて、スポーツ万能な馬場くんという男の子が好きだった。
シバケンが馬場くんと仲がいいことを知っていた私は、シバケンを通して、さりげなく馬場くんに自分をアピールしてもらおうと邪な作戦に出た。
当然のごとく、シバケンは怒り出した。
「何で俺がそんな面倒くせぇことしなきゃなんねぇんだよ。勝手に告りゃあいいだろう?」