センチメンタル*宅配便
カウルは息を切らしながら、時々電柱にマーキングをしながら、前に進む。
私はマーキングの後をペットボトルの水で流しながら、カウルの後を追う。
ブロック塀に囲まれた家が見えて来て、塀の上からたわわに実る柿を見上げた。
小学生の時だった。
イタズラっ子のシバケンがこの柿を盗もうと提案した。
ここの家に住むおじさんは近所でも怖くて有名で、カミナリおじさんって言われてたから、私は反対したけれど、シバケンは「見つからないようにやるから、大丈夫」と胸を張り、笑ってみせた。
私が門扉の前で中の様子を伺う係で、おろおろしながら、カミナリおじさんの家の玄関とシバケンのいる通りをかわりばんこに見ていた。
シバケンは助走をつけてブロック塀を一気に駆け上り、縁に立った。
近くにあった柿を1つもぎり、ピースサインを私に送る。
「シバケン!」
私は思わず叫んでしまった。
カミナリおじさんがこちらに向かって通りを歩いて来たのだ。
家の中にいると思っていたから、完全に不意打ちだった。
カミナリおじさんは出掛けてたのだ。
シバケンが私の声に後ろを振り向いた時にはもう遅く、カミナリおじさんはシバケンの後ろに立っていた。
「君、家の塀で何をしているのかね?」