センチメンタル*宅配便
カミナリおじさんは頭はつるつるなのに眉毛とアゴヒゲがもさもさに生えていて、風神・雷神像を彷彿させた。
私が恐怖に縮こまっていると、シバケンは塀の上からお辞儀をし、「すみません。おいしそうだったので、食べたかったんです。少しわけて下さい」とカミナリおじさんにお願いした。
怒られると思っていたけれど、おじさんはいきなりワハハハと笑い出し、
「そんなに食べたければ、好きなだけ持って行きなさい」と許してくれた。
シバケンの分と私の分、2つの柿をもぎって、シバケンは鮮やかに地面に着地すると、私たちはおじさんにお礼を言って、その場を離れた。
結局、あの柿はシブ柿だった。
私たちはおじさんに一杯やられたというワケだ。
今でもイタズラをしそうな子供がいたら、ああやって懲らしめているのだろうか?
おじさんの家を左に曲がって、もうちょっと行った所が私たちの通った小学校だ。
カウルはまだまだ住宅地をまっすぐ走る。
右手に見える階段を降りた所が、緑の垣根が続く遊歩道になってて、遊歩道沿いに私たちの通った中学校があるんだよね。
ここからじゃ校舎は確認出来ないけれど、遊歩道のベンチで部活帰りのシバケンを捕まえて、馬場くんの相談したっけ。
夏はアイスを食べながら、冬は肉まんを頬張りながら、他愛もない話をだらだらとシバケンとしたな・・・あの頃は楽しかった。
新しい生活に慣れるので精一杯だったから、すっかり忘れていた。
私が生まれて育ったこの街のいたる所にシバケンとの思い出が溢れてた。