センチメンタル*宅配便
住宅地を抜けると目の前には高台へと上る坂道が続いていた。
カウルは迷うことなく、高台へと向かう。
息を切らしながら、坂道を上る。
この坂を上り切ると、高台からこの街が一望できる。
「キャン キャン!」
カウルが飛び跳ねながら、私に頑張れと声援を送る。
カウルを追いかけて坂を上り切った瞬間、握っていたリードが離れ、カウルがどこかに向かって、物凄いスピードで駆けていった。
「待ちなさい!カウル!!」
声の限りに叫んで、カウルを追う。
リードを引きずったまま駆けるカウルはみるみるうちに小さくなっていく。
「カウル、待ってよ!!」
全力疾走するのなんて久しぶりで、日頃の運動不足が祟り、膝が悲鳴を上げている。
私はカウルの飼い主のシバケンと違って、運動神経まるでないんだから。
数メートル先の道端でカウルは私を待っていた。
お行儀良く座り、舌を出しながら、まん丸の黒い瞳が私を見ていた。
私はほっとして、呼吸を整えながら、カウルに近寄った。
「カウ・・・」