センチメンタル*宅配便


ぴゅうと心地良い風がどこからか吹いてきて、私の前髪を撫でた。


さわさわと風の声に振り向いた瞬間、思わず息を飲む。

 

白、ピンク、紅色。

 

ここは私たちが通った幼稚園があった場所だ。


更地になって、今は草がぼうぼうだって_____、今、目の前にあるのは一面に広がるコスモス畑だった。

 
可愛いらしいコスモスの花が秋風に揺れている。


糸のように細くて涼しげな葉の青々しい香りが風と一緒に漂ってきた。

 
暫らくの間、呆然とコスモス畑を眺めた後、はっと我に返り、カウルが近くにいるのを確認した。


カウルは道端に伏せ、舌を出して、体温を調節していた。


その隙に、カウルのリードを握りしめた。


 

ケータイのメール音が鳴り、私はポケットからケータイを取り出した。


知らないアドレスからだった。


パソコンからのメールだ。

 
(nek-atabihs@○○○.co.jp)

 
ken-shibata?


柴田兼、もしかしてシバケンから?私は急いでメールを開く。


< 46 / 80 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop