センチメンタル*宅配便


「けんちゃーん」

 
「けんちゃんってば、なにしてるの?」

 
あれは・・・幼稚園の頃の私?


水色の制服を着て、黄色い帽子をかぶった私が横切った。


私が向かう先にはしゃがみ込み、こちらに背中を向けながら、一生懸命木の枝で、土をほじくっている男の子がいる。


あれは、シバケン?

 
「たいむかぷせるをつくるんだ」

 
「たいむかぷせる?」

 
「ここにおとなになったおれへのてがみをかくの。そんで、おとなになったらそのてがみをよむの」

 
「いいなぁ。ちあきもやりたい」

 
「えぇ~」

 
シバケンは眉間に皺を寄せながらも「しかたないな~」と立ち上がった。


両手にお菓子の缶を持って。

 
「ねぇ、ちあきがおとなになったけんちゃんにてがみをかくから、けんちゃんはおとなになったちあきにてがみをかいてよ」


そう提案したのは私だ。


「いいよ」とシバケンは頷いた。


それから、2人して教室に戻り、それぞれバラバラに将来に宛てた手紙をかいた。


< 48 / 80 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop