センチメンタル*宅配便


私はシバケンへ、シバケンは私に。


画用紙にクレヨンで、覚えたての平仮名で。


お互い大人になるまで、お互いの手紙を読まない約束をして、私たちは園内にある花壇にタイムカプセルを埋めた。

 
幼い頃の記憶が走馬灯のように浮かんできた。


タイムカプセルのこと、すっかり忘れていた。


あの頃の私は未来のシバケンに何てかいたんだろうか?


思い出せなかった。

 
錆びた缶を開け、茶ばんだ画用紙を取り出した。

 
(みらいのちあきえ おれはせいきのひーろー おれんぢぶろさむのれつどになてるから ちあきはぴんくだよ けん)

 
「未来の千秋へ 俺は正義のヒーロー オレンジブロッサムのレッドになってるから 千秋はピンクだよ 兼」

 
誤字脱字だらけの文章を訂正して、思わず笑ってしまった。


そういえば、シバケンは当時、「オレンジブロッサム」という戦隊ものにハマってたな。


続いて、私がシバケンに宛てた手紙を読む。


(けんちゃんへ ちあきはけんちゃんが だいすきです おおきくなったら けんちゃんの およめさんにしてください ちあき)


あまりにもストレートな告白に目が点になった。


私の初恋の相手は誰でもない、シバケンだった。


そして、幼稚園児の私は素直にシバケンに気持ちを伝えてたのだ。


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