センチメンタル*宅配便
真夜中のクルックポー
満天の星が夜空に輝いていた。
寄せては返す波の音。
暗闇の中にぼんやりと浮かぶ上弦の月。
私は1人、夜の海に来ていた。
潮の香りを感じる。
砂浜の西側ずっと先の方には海に向かって防波堤が伸びている。
私は道路から浜辺と続く階段を降り、階段の手すりに寄りかかりながら、夜
空と海を交互に眺めていた。
ふと思い立って旅に出た。
職場と辞めて3ヶ月、新しい就職の目処もなく、日々だらだらと部屋の中に引き篭もっていた。
何もやる気がなく、人に会う気もなくて、ぼんやりと見ていたテレビから海の映像が飛び込んで来た。
そういえば、最後に海に行ったのはいつだったろう?
・・・行ってみようかな・・・そう思った私は早速、旅に出る準備を始めた。
時間はいくらでもあったから、鈍行列車に乗り込んで、外の景色を眺めながら気ままな一人旅は始まった。
目的地は海とだけ決めて、なるべく私を知る人がいない遠くに行きたかった。
この場所に降り立ったのは今日の夕方のことだった。