センチメンタル*宅配便
先輩はミステリアスな人だった。
どこに住んでいるのかとか、どこでバイトしているのかとか、どこの出身だとか、将来は何になりたいとか、個人的なことは何も知らない。
秘密基地にいても先輩は来るなり眠り込んでしまうので、相手を知るための質問をするきっかけも掴めずにいた。
私が知っているのは学部と年齢・・・それに先輩には好きな女(ひと)がいることぐらいだ。
「ミケ先輩、不倫してるらしいよ」
そんな噂を聞いたのは、つい最近のことだ。
ルックスはいいのに変わり者の猫先輩は校内でも有名な人だった。
午後の授業の後でカフェテリアでお茶をしていると、友達の1人がそんな噂話を語り出した。
丁度、カフェテリアから見える池の周りを先輩が歩いていた。
また秘密基地で昼寝をしていたのだろうと思った。
「フリン?」
普段の生活では聞きなれない言葉につい、オウム返しになる。
私がきょとんとした表情で訊ねると、昼ドラチックの泥沼恋愛が好きな
友達は、
「うっそー!?ミケ先輩が?」
「何で?何で?」
と興味津々だ。