センチメンタル*宅配便


「はい、どうぞ」

 
私が浜辺に降り立つと、少年はパーカーのポケットから温かいお茶を差し出した。

 
「今日はボクの奢りだよ」

 
ありがとうと受け取って、昨日と同様に砂浜に座り、暫し無言でお茶を飲む。



 
「クルックポー人はみんな君みたいに赤い瞳をしているの?」

 
今日は私から訊ねる。


少年からどんな答えが返ってくるのか少し楽しみだった。

 
「そうだよ。みんなボクみたいに赤い瞳で、髪は銀色なんだ。クルックポーはさ、地球みたいに太陽の光が届かないんだよ。宇宙の端にあるからね。だからいつも夜なんだ。太陽の光を浴びない人々はみんな白っぽくて光に弱くなるのさ」

 
「クルックポーでは星は見えるの?」


「見えるよ。でも、地球の星空とはちょっと違って見えるよ。だからボクは地球に来て、まず始めに星空の勉強をしたんだ」

 
彼は戸惑うことなくすらすらと答えを述べた。


へぇと相槌を打つ。

 
「クルックポー人はどんな言葉を話すの?」

 
「ここの言葉に少し似てるよ。でも文字の配列が少し違う。守り神の鳩と話す時は口笛を吹くよ」


「口笛で鳩と会話が出来るの?それと、何で君は日本語が話せるの?」

 
少しイジワルな質問をする。


彼は何でもないように笑うと、自分の耳の裏辺りを指差した。

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