センチメンタル*宅配便
「声、大きいって」
その子は口元を人差し指で押えると、テーブルに乗り出し、みんなに顔を寄せるように両手で合図した。
「実はね、私、見ちゃったんだ」
彼女は重大な秘密を発表するように告げる。
「ミケ先輩がね、年上っぽい女の人と歩いてたんだ」
腕を組みながら歩く姿は傍から見ても恋人同士で、仲むつまじい様子の2人はラブホテル街に消えて行ったのだという。
「遊びなんじゃないの?カラダの関係だけで、お金貰ったりするバイトあるらしいじゃん?」
「・・・変なドラマ見すぎ」
「でも、私はあれは付き合ってるって思うなぁ。何か、ラブラブのオーラ出てたもん。私たち幸せですみたいなオーラ」
「え~、解んないよ、そんなオーラ」
「でもね、その女の人、左手の薬指に指輪してたの。ペアリングってワケでもないし、怪しくない?」
怪しい、怪しいと先輩の不倫疑惑を断定している。
彼女たちは私が彼と2人で会っていることも、私が彼を好きなのことも知らない。
だからミステリアスな彼には不実なことが似合ってると、口々に妄想して騒いでいる。
けれども彼女たちの妄想はまんざら嘘じゃなかったみたいだ。