<短編>隣の席の不良くん
「なぁ相沢、悪ぃけどシャーペンの芯くんねー?」
「え、あ…はい、どうぞ」
「サンキュ」
黒木くんはめったに私に話しかけてくることはない。
それはもちろん私にとって嬉しいことなのだが、たまに話しかけられるとその度にビクビクしてしまう。
早く席替えしてくれればいいのに、といつも思う。
特にこの英会話の授業のときに、それを強く思う。
「じゃあこの文法を使って、隣同士で会話の練習をしてください」
先生がまた、いつものろくでもない指令を出す。
隣同士での会話…これこそ私がいま一番苦手としていることだ。
英語が苦手なのではない。
黒木くんが苦手なのだ。