<短編>隣の席の不良くん



「えーと、Would you like ……」


先生に言われた通り、黒木くんが英語で私に質問を投げかける。
不良くせに、なんで律儀に指示に従ってるんだろう。
しかも何故かこの人は、意外と英語の発音が綺麗だったりする。

それだけじゃない。
中間試験のときは成績上位者として張り上げられてたし、勉強ができるのだ。
だから先生は、黒木くんがどれだけ暴れても何もできない。

他の不良よりよっぽどタチが悪いと思う。
というか、生徒の成績しか見ない先生だってどうかしてる。
勉強ができれば何でもいいってわけ?
もっと人間的な面をちゃんと見てくれなきゃ。


「I would like to ……」


教科書の例文にありそうな英文を私は口にする。
いちおうこれで会話は成立したのだから、もう黒木くんと話す必要はない。
まわりがまだべらべらと喋っている中、私はそそくさと前へ向き直った。

が、横に視線を感じる。
黒木くんがじっと私の方を見ている。

…ど、どうしてまだ私の方を見ているの?
怖いから、そんなに睨まないでほしいんだけど!

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