<短編>隣の席の不良くん
「俺さ、見かけがこんなだから実際よく喧嘩も売られるけど、好きでやってんじゃねーんだよ」
「…はぁ」
「この金髪だって生まれつきでさ。
生まれ持ったモンを棄てるのは親にも悪ぃし、他にどうしようもねーから、ふっかけられたら相手してやってるだけなんだ」
「…そうですか…」
「だからさ、見かけじゃなくて中身で俺を判断してほしいんだ。
…相沢に勘違いされたままでいるのは、俺も正直しんどいから」
「あ…ごめんなさい」
知らなかった。
この人、本当は色々と抱え込んでいたんだ。
私こそ、人間的な面を見ていないダメな奴だったんだ。
人のことを苦手だと思うなら、その人にこそまっすぐ向き合わなくちゃならないんだ。
苦手だと思って逃げていたら、それこそ苦手な気持ちが膨れ上がってしまうだけ。
向き合って、話し合って、そうすれば誰にでも必ずいいところが見つかる筈なんだから。
困ったように笑う黒木くんを見て、なんだか申し訳ない気持ちでいっぱいになった。