君の笑顔が好きでした。
「ここは…どこ?」


周りを見回すが何もない草原だった。
人も雲も動物も何もない場所だった。
風が強く吹き付けると目の前には…彼が立っていた。


「な、なんで…翔が…?」


目の前には翔が立っていた。


「なぁ…俺たちやり直そうぜ…まだ間に合うだろ?」


うちは泣きそうだった。
ずっとその笑顔…声…優しさが好きだったんだよ?
じゃあ…なんで…?

まだ…間に合う?


「まだ間に合うの?」


「あぁ、俺がそう言ってるんだから…俺はお前だけが好きなんだ。」


照れ隠ししながら笑う翔に心が揺れた。


「好き…うちも、好き…だった。」


だった?

あれ?なんでそんなこと…うちは翔が…。



気づくと目の前には明かりのついていない蛍光灯が見える。
ゆらゆらと揺れる視界にぼんやりと人影を認識した。

じゃあ…さっきのは夢?

夢とわかったとたん涙が溢れてこぼれ落ちた。


「…ずっと一緒にいたかった。」


うちは勝手に手が震えだした。
翔のこと信じていたのに…なんで裏切ったの?


声が出そうなのを我慢して噛み殺した。


「悠里ちゃん?」


うちの名前を呼んだのはベットの隣の椅子に座ってこちらの顔を覗き込んでいる遥斗くんだった。


「泣いているの?」


「泣いてなんかないよ。」


うちは手で顔についた涙を一滴残らず消した。
そして今精一杯の笑顔を見せた。

その瞬間遥斗くんが近づいてきて抱きしめてきた。


「俺の前で嘘なんかつかないで…悠里ちゃんが泣くと俺も悲しくなるから…。」


その言葉で涙がこぼれて消えた。


「しんどいなら俺をもっと頼ってよ。」


暖かい腕の中でうちは子供のようにしがみついて泣いた。


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