君の笑顔が好きでした。
うちはヒリヒリする目を擦りながら前を歩く遥斗くんの後ろを歩いていた。
優しすぎる遥斗くんの大きな背中を眺めながら歩いていた。

その時、急に足を止めた遥斗くんにおもいっきりぶつかり尻餅をついた。
後ろを振り返り手を差し伸べながら遥斗くんは、


「急にごめんね。雨がすげーもんだから…。」


そう言った遥斗くんは後ろを振り返った。
うちも外を見ると横殴りの雨が降っていた。

うちは急いでバックの中を探し回ったが折りたたみ傘と言うものは存在していない。
まして今日雨が降るなんて思っていなかったため傘もない。

おどおどしているうちを見て優しく遥斗くんは、


「俺の傘だったらあるから…入る?」


って言った。
うちは上下に頷いた。


傘に入っていても横殴りの雨は容赦なくうちの体に打ち付けてきた。
遥斗くんはうちの肩に手を回して「もっとこっちに寄れよ。」って言ってきた。


遥斗くんとの距離が近くなり自分の鼓動が高鳴るのがわかった。
でもまーくんに比べたら…。


いやいや、今関係ないし!
もうあんな奴知らないもん!


心の中で決心をつけていると自分の視界に傘もささずこちらを見ている人が見えた。


「あれ誰?」


と聞くと、


「あれ…誠じゃね?」


なんで…傘もささずにこっち見ているの?
忘れたんだよ。
じゃあなんで立ち止まっているの?
多分…忘れもんしたから!

とか一人で自問自答しているとまーくんが話しかけてきた。


「悠里…俺…」


「知らないっ!もうまーくんとなんて関わらないから!」


うちはそう言うと遥斗くんを引っ張って歩いた。

遥斗くんは、


「いいの?誠いるのに帰っても?」


いいんだもん…別に…あんな奴。
もう好きなんかじゃないもん。


うちは後悔した。
あの時なんで話を聞かなかったのか。
好きじゃないって思ったのか。


二人歩くなか背中に感じる寂しい視線を感じながら家に帰った。

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