君の笑顔が好きでした。
俺が教室に入るとうつむいて座っている悠里が目に入った。


「…なにしてんの？」


「う、うひゃぁぁぁッ！！？」


悠里は飛び上がり後ろにこけてゴミ箱をひっくり返して倒れ込んだ。
「いてて…」と言いながら起き上がった。


「大丈夫か？」


と言いながら悠里の頭についているゴミを取ろうとした。
俺の手を払いのけて後ろへさがった。


「こっ…来ないで…！」


そう言う彼女の目には涙が溜まっていた。
必死に涙をこらえているようだったがポロポロと涙が出ていた。


「なんで…なんでみんなうちを裏切るの…？」


俺が返事を返す前に悠里は話を続けた。


「…まーくんだってそう。…翔だってそう！親だって！みんなみんな！！！」


涙をこらえながらしゃくり上げ、怒りに満ち溢れた声。
力強く握られた拳はプルプルと震えていた。

過去に一体何があったのか…？
俺が一番気になるのは『翔』ってやつだ。
悠里とどんな関係があったのか？

彼女は耳を塞いで声を張り上げた。


「もう、わかんないよ！」


ひどく孤独な彼女にかける言葉が俺には見当たらずただただ、彼女が泣き叫ぶ姿を見続けることしか出来なかった。


悠里はずっと話続けた。
なぜ人間と言う生き物は意思が軽いのか？
信じても無駄なのか？
才能があっただけで態度が変わるのか？
才能が無くなっただけで見捨てるのか？
裏切るって平気でできるのか？


窓から見える夜景は彼女との心とは裏腹に街灯の光で綺麗に輝いていた。
そうそれは彼女の全てが変わる前のような景色だった。
悠里にどんなことが起きたかは俺にはわからないし、過去の苦しみも知らない。
だが話を聞いていてわかったことがあった。


悠里の全てが変わる前はとっても輝いていたということ。



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