パツ子と甘えん坊くん。
この声、この呼び方、間違えないあいつだ。
「…小パツじゃない小夏だ、ハゲ太」
顔を上げ睨むように見ると、そこには野球のユニフォームを着たハゲが立っていた。
奴はハゲじゃない、丸刈りと言い返してきた。
こいつは如月 健太(きさらぎ けんた)。
あたしのことを"小夏"と"小さいパッツン"を合わせたのか"小パツ"と呼ぶ最悪な男。
だからあたしも健太の"太"と"ハゲ"を合わせて"ハゲ太"と呼んで睨んでやる。
更に最悪なことにこいつとは小学校から一緒の腐れ縁。
無口な野球少年のくせにあたしへの嫌味は達者なやな奴。
ちなみにハゲ太は菜緒の彼氏。
こいつのどこがいいのか、小学生から一緒にいても分からない。
真琴の方が無限倍、優しくてカッコいいのに。
そんなハゲ太は中々あたしの前から消えてくれない。