*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
「…………ど、どうしちゃったの、蘇芳丸………。


なんだか、蘇芳丸じゃないみたい………」






「……………」







灯は押し黙ったまま顔を背け、汀をゆっくりと屋根の上に下ろした。




しかし汀は灯の袖をぎゅっとつかみ、食い下がる。







「ね、ね、本当なの!?


私のために、私に朝日を見せるために、ここまで連れてきてくれたの!?」






「……………」






「ねぇ、蘇芳丸、私のために!?」






「……………」






「そうなの!?」






「…………っ、騒がしい奴だな!


ついさっき、そうだと言っただろう!」








灯が頬を微かに赤らめながら言ったので、汀の顔がぱぁっと輝く。








「すおーまろーーーっ!!」







汀は灯に飛びついた。






灯は慌てて汀の身体を抱きとめ、しかし勢いに負けてそのまま屋根の上に尻もちをついた。







「…………っぶないな、阿呆!!」






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