*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
尻もちをついたのが屋根の端だと気づき冷やりとした灯は、汀の頭を思い切り小突く。




それでも汀は笑顔で抱きついたままだ。







「だって、だって、嬉しいんだもの!!」






「………だからって、こんな所で飛びついてくるな!


危ないだろう!?」







「だって嬉しいんだもの!!」







「阿呆かっ!!


落ちたらどうするっ!!」







「嬉しいんだものっ!!」







「それは分かったから!!


状況を考えろ、状況を!!」







「嬉しくて考えられないわ!!」







「……………っ」








灯は呆れるあまり、もはや説教をする気も失せてしまった。






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