*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
「朝日がのぼるわ、蘇芳丸………」






「…………あぁ………」








汀は目を輝かせながら東の空を見つめる。







橙の実のような朝日が、じわじわと山の端を溶かしてゆく。





橙色の光が、真っ直ぐにこちらに伸びてきた。





その光が汀の瞳を射る。






灯は朝日から目を逸らし、汀を見つめた。





目映い橙色に縁取られた輪郭。



そして、不思議な空色に煌めく瞳。






視線を感じて振り向いた汀は、強い光に溶け込みそうな赤銅色に輝く、灯の髪に目を奪われた。










「ーーーーーきれいねぇ」






「…………あぁ。きれいだな」







屋根の上で、燃えるような朝の光に全身を包まれ、二人は言葉もなく見つめ合った。






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