*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
聞き間違いではないと確信し、灯は立ち上がる。





足音を潜めて妻戸に近づくと、そろりと開いた。






「……………」






母屋の中に、人影があった。






一人ではない。







彼らはそれぞれに、几帳や屏風の陰を覗き込んでいる。







それをみた途端、灯がくすりと笑った。







「…………四つ子」







その声を耳にした人影が、一斉に振り向く。







「ーーー灯!!」







塗籠の前に佇む灯に、三人が駆け寄ってきた。







「灯! 久しぶり!!」






「…………あぁ、久しぶりだな」







満面に笑みを浮かべた少年少女たちに囲まれ、灯は苦笑をもらした。







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