*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
「灯…… 会えてよかった」





真っ直ぐな黒髪をかきあげ、少女が言った。







「僕たち、迎えに来たんだよ!」






巻き毛の少年は、にこにこしながら垂れ気味の目を細める。







「そうそう!!

心配したんだからぁ!!」






肩の高さで切り揃えた髪を揺らし、大きな瞳の少女は嬉しそうに灯の腕に抱きついた。







詰め寄ってきた三人のにぎやかな雰囲気に呑まれながら、灯は答える。








「ありがとうな………、卯花(ウノハナ)、糸萩(イトハギ)、楪葉(ユヅリハ)」








灯に名を呼ばれて、三人は嬉しそうに笑った。





少し離れたところに、むすっとした面持ちで立っていた背の高い少年が、灯に声をかける。







「そうだよ、灯。


俺たち、ここまで調べて忍び込むのに、どれだけ苦労したと思ってるの?」







「………あぁ、すまなかったな……、藤波(フジナミ)」







「ほんとだよ」








藤波は、無造作に束ねた長い髪を揺らしながら、ぷいと顔を背けた。







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