*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
「右大臣が物詣に出かけるっていう噂を聞いてさ。


今日なら警備が手薄になって、上手く入り込めるだろうと思って、皆で来たんだよ。


………全く、勝手なことばっかりして、困ったもんだよ」







「ごめんな」








藤波が肩を竦めるので、灯は笑いながら謝った。







「怪我をしてるという話を藤波が仕入れてきたんだけど………。

大丈夫なの? 灯」







卯花が微かに眉を顰めて訊ねる。







「………あぁ。

矢を受けたんだが、もう治ったよ」







灯は胸を指しながら頷いた。







「珍しいね、灯が矢なんかに当たるなんて………」







糸萩が首を捻りながら呟く。







「………ちょっと、油断した」







灯は苦笑した。







「灯が油断なんて!

いったい何があったの?」







楪葉が腕にすがりつきながら言うので、灯は頭を撫でた。







「俺だって、油断くらいするさ」







すると藤波は「へぇ?」と言って眉を上げる。






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