*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
しかしすぐに気を取り直し、母屋を出た。




(………きっと、裏から出るはずだわ)




そう考えて、簀子を駆ける。




驚いて声をかけてこようとする女官たちを無視し、裏へ回った。






(………どこ?



どこにいるの? 蘇芳丸ーーー)






裏庭の真ん中に立ち、ぐるりと視線を巡らせる。





一瞬、視界の端に赤いものが映った。





はっと息を呑み、汀は駆け出す。





「あ…………!!」





築地の上に飛び乗った人影が見えた。






(ーーー蘇芳丸!!)









しかし、灯だけではなかった。





(…………だれ?



だれと一緒にいるの?)







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