*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
箸を置いて手持ち無沙汰になった手を、脇息の上に載せて、汀はぼんやりと視線を巡らせる。




その薄花色の瞳が、塗籠の妻戸にとまった。





「……………」





汀は何も言わなかったが、何を思っているのかはもちろん露草にも分かる。





(………朔月の日に、あの若者が姿を消してから、もう三日。


姫さまは、ずっとお元気がない………)





灯がいなくなって、汀は元に戻るどころか、もっと口数が少なくなっていた。





それは、貴族の姫君らしい様子になったと言われればその通りなのだが。





(………なんだか、寂しいような気がする………)





露草も、ひっそりと小さく溜め息を吐き出した。





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