*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
汀が何も話さないので、北の対にはいつになくひっそりと静まり返っている。




その沈黙を破るように、汀が突然、口を開いた。






「そうだわっ、露草!!」





「はい?」





突然に明るい声音で名を呼ばれ、露草は困惑したように答える。






「ねぇねぇ、露草も一緒に、ごはんを食べましょうよ!」





「えっ! えええっ!?」






露草は、ひっくり返りそうなほどに驚いてしまった。




貴族階級の人々は、他人と食事を共にすることなど無いのだ。





しかも、仕えられるべき姫君と、お仕えすべき女房が、並んで食事をとることなど、全く考えられないことであった。







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