*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
「今日はよく晴れて、月が美しゅうございますわ。


釣殿へいらっしゃって、お月見をなされたら如何でございましょうか」





露草の言葉に、汀は驚いたように目を見開いた。



汀が姫君らしくもなく出歩くことを、普段あまり快く思っていないはずの露草が、自らそれを勧めてきたのだ。





「………まぁ。


どうしちゃったの、露草」





汀は心中の思いをそのまま口に出した。





「………いえ。


姫さまは月がお好きでいらっしゃいますので………。


お月見をなされば、いくぶんお気持ちも変わられるのではないかと………」





「まぁ…………露草」





汀は手を組んで、きらきらとした瞳で露草を見つめた。






< 153 / 650 >

この作品をシェア

pagetop