*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
*
「ーーーわぁっ、灯だ!!」
頭上に生い繁る樹々の葉をさわさわと揺らすほどの、明るい声が響き渡る。
灯は藤波たちに連れられて、久々の白縫山に足を踏み入れた。
仲間が集まって住む村へと近づいた途端。
「灯が帰って来た!!」
「ほんとかよっ!?」
周りを子どもたちが取り囲んだ。
彼らの面倒を見ていた女たちも、それにつられたように近づいてくる。
「まぁ、ほんと、灯じゃないの!
いったい今までどこをほっつき歩いてたの?」
「そうよ!
あんまり音沙汰ないもんだから、とうとう死んだか、ってみんな言ってたのよ」
女子供たちに囲まれて、灯は困ったように足を止めた。
「………そんな簡単に死にゃしないよ」
灯が眉を上げて苦笑を洩らすと、女たちはきゃあきゃあと騒いだ。