*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
「…………灯を逃がすなよ」






黒松は念を押すように卯花を見る。




卯花が可笑しそうにくすくす笑いながら頷いたところへ、灯が近づいてきた。






「………なんだよ、逃がすなよ、って。


俺を獲物みたいに言うな」





顔を顰めている灯に、黒松は無表情に向き直った。





「それはお前に前科があるからだろう。


四つ子にでも頼んでおかないと、お前はすぐにふらふらいなくなるからな」





「言われなくても、今日くらい、ちゃんと会いに行くさ」





「どうだかな」






灯は肩を竦めて歩き出す。




四つ子も慌てて後を追った。








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