*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
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「ーーーお頭っ!!
灯が帰って来たぞーっ!!」
遠くから叫ぶ声を聞いて、刀の手入れをしていた群雲(ムラクモ)は顔を上げる。
「………おう、やっとか」
困ったような苦笑いを浮かべて、群雲は立ち上がった。
がっちりとした体躯の、堂々たる大男だ。
ゆっくりとした足どりで、ぼさぼさの硬い髪を掻き上げながら歩く。
群雲は、この白縫党ーーー白縫山の盗賊団を率いる頭領である。
先代の頭領・疾風(ハヤテ)は群雲の父親であった。
彼が一代で作り上げたこの白縫党を、一人息子の群雲が継いだのである。