*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
入り口は狭いものの、中は洞窟のようになっており、広々としている。




ここが、頭領である群雲の住処である。





群雲は隅に置いてある唐櫃(からびつ)の中から、衣装に包まれた瓶子(へいじ)を取り出した。






「あっ、それ、まさか!!」





糸萩が目ざとく見つけ、声を上げる。



卯花も気づき、眉を顰めた。





「群雲ったら、それ、お酒でしょう。


そんな所に隠していたなんて………」






「檀弓にばれたらまた怒られるよ!!」




「お前たちが黙っていてくれたら、ばれないさ」





群雲は鷹揚に笑いながら、蝋で塗り固められた蓋代わりの紙を瓶子から外した。





碗を二人分出してきて、瓶子の中の酒をとぽとぽと注ぐと、灯と自分の前に置いた。







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