*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
「それにしてもなぁ」





群雲が改まった口調になる。






「灯、お前な。


単独行動はするなとあれだけ言っただろ?



せめて、どんな邸か、どんな警備が敷かれているのか、ちゃんと調べてから入れといつも言っているのに………」







「……………」






「また今回も、誰にも知らせずに都へ行って。


行き当たりばったりで、適当なお邸へ盗みに入って」






「……………」







灯は無言のまま、さらに酒を口に含んだ。




群雲はそんな態度には慣れているので、気にすることもなく小言を続ける。







「それで挙句の果てに、矢傷まで負って。


命が助かったから良かったものの、もし何かあったらどうするつもりだったんだ」






「…………あぁ」






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