*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
顔を上げた檀弓は、今度は灯に目を向けた。





「灯、おかえり。久しぶりね」



「あぁ………」



「急に消えたから心配したのよ、馬鹿!」



「すまなかった………」





殊勝に謝る灯の手許に、檀弓の視線がとまる。





「………あら、それ、お酒じゃない!」




「……………」





檀弓は群雲をぎろりと睨んだ。






「…………群雲。


まーた飲んでたの?」






群雲は蒼ざめた顔に誤魔化し笑いを浮かべる。






「いや、違うよ、檀弓!


これは、えーと、…………灯の帰りを祝うために、一杯ふるまっただけさ」





「じゃ、群雲は飲んでないわけね?」





「………う、うむ、まぁ………」







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