*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
檀弓と四つ子が洞窟を出ていった後。




灯がくすりと笑ったのに気がつき、群雲が振り返る。





「………なんだよ、灯」



「いや…………」





灯はまだ可笑しそうにしている。





「………相変わらず、おしどり夫婦だなぁと思って」





その言葉に、群雲は思い切り顔を顰めた。





「なんだよ、夫婦って。


俺と檀弓はただの友人だよ。


もしくは盗賊の頭領と郎党の一人さ」





「あぁ、そうだったな。すまんすまん」





その言葉が本心からではないことは、灯の表情を見れば一目瞭然である。





群雲は「ったく………」とぶつぶつ言いながら、碗に酒を注いだ。






< 179 / 650 >

この作品をシェア

pagetop