*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
手をつないで歩きながら、小桃が「あのね」と灯を見上げる。





「朽葉丸ったら、最近すごーく怖いのよ」



「怖い? 朽葉丸が?」



「なんかねぇ、近づくとすぐに唸って噛みつきそうな顔するの」



「………ああ。そりゃ、子を産んだばっかりだからだよ」



「へぇ?」



「子犬たちを守ろうと、気が立ってるのさ」



「ふぅん………」



「朽葉丸も母親になったんだなぁ」





灯はしみじみと溜め息をついた。






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